初心者のサイクリングについての考察
■サイクリングファッションについて
前の仕事を辞め、今治に引越しして収入も減ってしまいました。
それなのに。
こともあろうに18万円(本体の定価は15万円)もの超高級ロードバイクを購入してしまいました。
どう考えても今は無駄遣いをすべきではないのですが、私はまったく後悔していません。
本当に男の中の男ですね。
で、ロードバイクは購入したので、次は服装ですね。
昔は、変なヘルメットを被って、なんだかピチッとした服を着た変な人たち!
って思っていたのに気づけは私もその仲間になろうとしています。
まぁ私はそこまで本格的な恰好で走る訳ではないのですが、昔ちょっぴりバカにしていた恰好に今ではほのかな憧れまで抱くようになっているのです。
ホント人生ってどうなるか分かりませんね。
ただ実はですね。
本格的な恰好をしたくても出来ない理由があるのです。
ガチのサイクリストの方々は、坂道なんかも平然とグイグイ上っていくのですが、こっちは48歳の似非サイクリストなので、米粉のエビせんべいくらいギアもふわっふわに軽ーくして、キコキコと死ぬほど遅いスピードで上っていきます。
ところがですよ。
本格的なサイクリストの恰好をしてしまうとそんなことは出来なくなるのです。
「コイツ本格的な恰好してるけど三輪車並みのスピードじゃねぇかよ!」
「あ、コイツさっき駅前で見かけた奴じゃん!
こんな本格的な恰好してるからてっきりガチレーサーなのかと思ったら、こんなユルい坂で凄まじい呼吸音だな! 過呼吸かよ!」
「なによこの加齢臭!」
まー君「パパ! あの小太りのおじさん、マジで恰好だけだね!」
父「え?あぁ…そうだねぇ。
まー君はあんな大人になっちゃダメだよ」
まー君「うん! 絶対ヤダ!」
などと思われるのです。
恐ろしいですね。
誰だよまー君。
でもですね。
ちょっと初心者っぽい雰囲気を残しているとボクも奥さんも大丈夫。
「あ、この人遅いけどサイクリングを始めたばかりなのね!」
「おじさんなのにがんばってて何だかカワイイ!」
「ねぇねぇ! あのふっくらして貫禄のあるおじさま見て! ダイエットかしら! ファイトッ♪」
「まぁハァハァ言って…なんてセクシーなのかしら!」
どうですか!
素晴らしい作戦でしょう!
ちょっと初心者っぽさを残しておくことで、皆が優しい目で見てくれるのです。
とはいえ、あまりに適当な恰好だとこのようなマイナス面があります。
- お尻が痛い(レーサーパンツが必要)
- Tシャツとかだと空気抵抗が大きい(サイクルジャージが必要)
- 危険(ヘルメットが必要)
なので素人感満載過ぎると危険だしダサいので、あくまでも初心者っぽい感じでよろしくです、先輩。
■サイクリングにおける心理戦とは
せっかくなのでここで、サイクリングについてもう少し突っ込んだ話をしましょう。
サイクリングの難しいところは、向かい風や斜度の高い坂道なんかではなくですね、実は心理戦なのです。
「なんだよ心理戦って。アホか」
とお思いでしょうが、画面を閉じずにまぁ聴いてください。
私もそうなのですが、
やはり一生懸命走っているというのに後ろから来た人に追い抜かれるのは切ないものです。
自転車は抜かれると何だか負けたような気がします。
もちろん一度くらいなら仕方ないのですが、酷いときは何度も何度も幾人もの人に追い抜かれます。
次から次に抜かれる度に自分の不甲斐なさに打ちのめされるという、凄まじく過酷な趣味なのです。
ところがです。
時折ですが、なんとこんな私よりも遅い方もいるのです。
滅多にいないのですが、それだけにこれがまた難しい。
こちとら抜かれる切なさは十分過ぎるほどに知っています。
それなのに今度はこっちが遅い人を抜かなくてはならないのです。
ここで諸先輩方もぜひ想像していただきたいっす。
前方にやたら遅いサイクリストがいます。
追い越せるのに追い越さないのは、真剣に走っている前の人に失礼なので、こちらも手を抜かずに追い越すことにします。
追い抜き方は二択です。
ゼーゼーハァハァと凄まじい呼吸音を発しながら汗だくで抜くのと
「オレこんなにスピード出してるけど、まだまだぜんぜん余裕なんすよねー♪」
って感じで呼吸も乱れずに抜くのであれば、どちらが格好良いでしょうか。
当然、後者の方が格好良いですよね。
実は私も自転車で抜くときは、死ぬほど苦しくても楽勝ポーズを維持したままこれまでは抜いていました。
だがしかし!
最近になってこれが間違いだったとようやく気付いたのです。
ほぼ抜かれることが多い私ですが、私を追い越す人がまったく余裕な感じで抜かれるとそれだけでもう半泣きになります。
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・こんなイメージです
負け → 必死な私
勝ち → 余裕で私を抜いていく人
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ですが、もしも抜く人がハァハァ言いながら抜いていってくれるとどうでしょう。
「あぁ、この人もしんどいんだ!
みんな同じだ! 僕は一人じゃないんだ!
生きてて良かった!
母さんありがとう!」
となるのです。
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・こんなイメージです
必死な私 ≒ 必死で私を抜いていく人
⇒ 同じ辛さを共有 ⇒ 仲間
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どうですか。
これでみんなハッピーです。
そこに恋が生まれるかもしれません。
天才ですか、私は。
■実践
ということで、先日のサイクリングでの出来事を一緒に振り返ってみましょう。
おおっ!
前におあつらえ向きに坂道をのんびり走っているサイクリストがいるではありませんか。
よし。
ではまずは作戦の確認です。
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① 前の人も一生懸命走っていることを忘れない。
② 決して余裕ぶって抜いてはダメ
③ 「私もそれはもう必死で坂を上ってますよ、でも私には私のペースがあるから追い抜きますね」という気持ちで、敢えて必要以上にハァハァと息を切らせて後ろから迫る。
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この作戦に則り、前のサイクリストを追い抜きにかかります。
が、いったいどうしたことでしょう。
前のサイクリストさんのペースがグンと上がったではありませんか。
やれやれ。
まさかこの私に張り合ってくるとは。
なかなかの負けず嫌いですね。
こうなってくると話は変わってきます。
こんなショボい坂をちまちま走ってた奴に負ける訳にはいきません。
これは勝負です。
こちらも半狂乱になって息を切らせて追い抜きにかかります。
が、相手もなんと立ちこぎになって、なかなか抜かせません。
「ハァハァハァハァッ!
この人こんなに…ハァ細いのに…す、凄いがんばる…ハァハァ…じゃないか」
……。
…細い?
………!!!!
あぁっ!
なんと、あろうことか前のサイクリストはよく見ると女性ではないですか!
どうか貴兄らもこの女性の気持ちを想像していただきたい。
人がほとんど通らない坂道を汗だくの中年男性が後ろから異常な呼吸音で追いかけてくるのです。
こんな恐ろしいことがあるでしょうか。
この事実に気づき、あまりのことに心の中で
「ギャーッ!」
と叫びましたが、きっと前の女性サイクリストも心の中で
「ギャーッ!」
と叫んでいることでしょう。
ここでしっかりと抜いてしまわないと、その女性の中で私はただの汗だくの変質者のままなので、死にもの狂いでペダルをこいで、抜き去ってやりました。
これで私は女性の中で、呼吸の荒い変質者から異常な負けず嫌いな中年となった筈です。
■まだあります。
他に困ることはですね(しつこい)。
こっちを追い抜いたのにのんびり走るサイクリストも困りものです。
抜いたらさっさと行ってくれれば良いのですが、そんなに速くないのでこっちもまたすぐに追いついたり、抜いてしまうことがあるのです。
あぁ気まずい。
これだと追い抜かれて意地になって抜き返そうとする狭量な中年男性となってしまうのです。
なんということか。
このようにサイクリングはとてつもない心理戦が繰り広げられるのです。
自転車に乗るのも難しいものですね。
ではまた。