筍 -絶望と再生の物語-
■今の勤務時間について
東京から今治に引っ越すにあたり、いろいろと趣味の幅を広げてチャレンジしたいことがあります。
- 釣り
- 家庭菜園
- 料理 ・・・ etc.
どうでしょう。
どれも楽しそうじゃないですか。
今のところステイホームというだけでなく、実は私ですね、時間がありあまっているのです。
というのも現在の勤務時間が8:30~16:30なのです(昼休憩1h)。
以前の仕事は、8:00には職場に着いて、休憩らしい休憩も取らず(PCで作業しながら昼ご飯を食べていました)、18:30くらいに退社するといった感じでした。
だいたい10時間~11時間の勤務時間に通勤時間が往復100分。
これが!
なんと!
今は7時間勤務で通勤時間は往復10分!
往復で10分て!
これで良いのかと少し懊悩しましたが、そういう規定なのです。
なので、買い物もせずにとっとと帰った場合16:38くらいには自宅に着いているのです。
もちろん3年後には地域おこし協力隊ではなくなります。
ただ単に転職して働きに来たのではありません。
ですので、
「わーい♪ 早く帰れるー」
とバカみたいに喜んでいる訳にはいきません。
とはいえ。
早く帰れることは事実なので、時間だけは気を失いそうなくらいあるのです。
■通勤時の風景。ちゃんと信号もありますぜ。
ということで先日も
「わーい♪ 早く帰れるー!」
と鼻歌を歌いながら帰って来たのですが、この日はなんと春の旬の野菜、筍を頂いておりました。
もちろん48年間の人生で、ガッツリ本物の採れたて筍を調理したことなんてありません。
ですが、やってみたいリストに料理を掲げている以上、筍から逃げる訳にはいきません。
この旬という字に竹冠を付けた筍をやっつけてやろうじゃないですか!
ヒアウィーゴー!!
■筍と米ぬか
ということで、手元には筍とスーパーで買ってきた米ぬかがあります。
筍に関しては、デカいのを持っていけと言っていただいたのですが、何分一人暮らしなので食べきれずに余らしてしまうのも勿体ないので小ぶりなのをチョイスさせていただきました。
またその時、米ぬかで煮るということも教えてもらいました。
これでもう準備は完璧です。
■いただいた筍と30円の米ぬか。
ついさっきまで土に生えていただけあって筍はなかなかの存在感です。
なんでもそうですが、初めて触るものってちょっとおっかないですね。
■小ぶりといえどもなかなかデカいので必死になって真っ二つにしてやりました。
ここで意外だったが、皮なんてちょっと剥くだけと思っていたら先端の方に幾重にも皮が重なっていたのです。
イメージと全然違うと思いながら、狂ったように皮を剥きまくります。
わさわさと大量の皮が溜まっていき、あっという間に俎板が皮まみれになります。
■この子も数時間前までまさかこんな姿になるとは思ってもみなかったことでしょう。
それにしても皮を剥くと思ったより小さくなりました。
こんなことならもっと大きいのを所望すれば良かったです。チッ!
■痛恨
ちょっぴり残った産毛みたいな皮と下の紫の何だか気持ち悪いところを包丁で削ぎ落して丸裸にして、いよいよ茹でです。
茹でて茹でて茹でまくってやろうではないですか。
沸騰したお湯に筍と米ぬかを全部ぶち込んでやりました。
それにしても米ぬかを使って灰汁抜きだなんて、如何にも料理ができる男みたいで格好良いですね。
ニヤニヤしながら様子を見ていたのですが、どうもイメージしていた感じと大分違います。
深く考えずに投入した米ぬかがやはり大量過ぎたのか。
何だかもうドロッドロなのです。
「…ん? これでいいの?」
急激に不安になり、慌ててネットで検索してみました。
やはり思った通り米ぬかは既定の数倍もの量を投入しているようです。
更にとんでもないミステイクが見つかったのです。
なんと筍は、皮を剥かずに茹でるというではありませんか!
いったい皮を剥かずに茹でるなんて誰が思いますか。
まず剥くでしょ。
え? 常識? そうなの?
……。
…あ、そう。
しかし愛しの筍はすでに皮を剥かれ、信じられないくらいの大量の米ぬかの中で身悶えています(姿は見えませんが)。
せっかくいただいた筍を私は食すことができるのでしょうか。
しかし、ここまで来たらもう引き返す訳にはいきません。
男には引き下がれない時があるのです。
このまま突き進もうではありませんか。
■茹でる(東京あたりでは「うでる」っていう人もいますね)。
■落し蓋代わりにアルミをのっけて暫く茹で続けます。
そうして30~40分放置するのですが、部屋中に充満する息苦しくなるほどの米ぬかの臭いが増々不安を掻き立てます。
もうそろそろか…。
恐怖とちょっとした恐いもの見たさのせめぎあいの中、ドキドキしながらアルミを外しました。
■もちろん筍の姿は見えず、とても口に入れるものが漬かっているとは思えない地獄のような米ぬか鍋の姿がありました。
…米ぬか鍋、流行るかな。
あまりの惨状に呼吸が浅くなり、パクパクと口を動かしながらむせ返る米ぬか臭を掻き分け、新鮮な酸素を求めて窓を開けて気を落ち着かせます。
するとどうしたことでしょう。
綺麗なデカい満月が、米ぬか地獄で苦しむ私を優しく包み込むように輝いていたのです。
■この日はフラワームーンとかいう大きな満月が出ていました。
フラワームーンに励まされながら
「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ」
と心の中で呟きながら、ヘドロに埋まっている生身の筍を救い出し、狂ったように謝りながら水で洗い流しました。
■再生
すると一体どうしたことでしょう。
再起不能かと思われた愛しの筍が神々しく輝いていたのです。
■美しくツヤツヤとした筍様。
この日は、筍ご飯、スナップエンドウと筍のガーリック炒めに味噌汁にも筍をぶち込んで、筍様を食いまくってやりました。
結果的には、先に皮を剥いて茹でてしまいましたが、とても美味しくいただくことができました。
感謝。
ちなみに筍は食べ過ぎると便秘や下痢や肌荒れになったりするそうなので貴兄らも注意してくださいね。
そして、ここまで何枚も写真を撮っておいて、作った料理の写真を撮り忘れるというミステイク。
あーあ。
重ね重ね筍に申し訳ない。